Blindfold-奪う連中と密やかなる者たち
第二章*得体の知れない者から抜粋
馬車は厩舎のすぐ傍に止められている。厩舎の奥側に平屋の建物が木々の合間から見える。おそらくあれが拠点だろう。
ヒミとサスメイヤ二人がかりでクマリを下ろそうとしているところへ、ペッテルが指示を出す。
「サスメイヤ、クマリを部屋まで運べ」
「僕ひとりで? 人使い荒いなあ」
「背負えるだろうが。早くしろ」
「背負うまでが大変なんだよな~」
愚痴るサスメイヤにペッテルも手を貸して背負わせる。傍から見ている限り、ペッテルは口が悪いけど協力的だ。
クマリを背負ったサスメイヤが歩き出す。部屋へ運ぶのはいいけれど、誰も手当について言わないので、思わず口を出してしまう。
「あのっ、治癒師は?」
「ああ、俺が呼んでこよう」
ヒミがサスメイヤとは別方向へ足を向けた。ということは、治癒師は拠点に常駐しているのだろうか。
「娘さんはこっちだ」
ペッテルがわたしを手招きで呼ぶ。ヒミとも違う方向へ向かうようで、ここからはバラバラで行動だ。
「クマリはちゃんと手当するさね。あんたはこっちだ。おいで」
どう考えてもこれ以上の心配は無用だった。諦めてペッテルについていく。奥にある平屋へ向かっていた。なにを話せばいいかわからず、ペッテルも何も言わない。しばらく二人の足音だけが響く中、ペッテルが独り言のように告げた。
「あんたは優しい子だ」
思いも寄らない褒め言葉にどぎまぎする。どうもペッテルはわたしには優しい。たぶん気遣ってくれているのだろう。
「えっ、いえ、そんなこと。ふ、普通です」
「そうか、普通か。そうさね。はっはっはっは」
何故か笑われて気恥ずかしくなる。
クマリとは出会ったばかりでどんな人かわからないけれど、ヒミとわたしを庇って必死に闘ってくれた。気にならないはずがない。
Copyright (c) 2017 kud All rights reserved.ヒミとサスメイヤ二人がかりでクマリを下ろそうとしているところへ、ペッテルが指示を出す。
「サスメイヤ、クマリを部屋まで運べ」
「僕ひとりで? 人使い荒いなあ」
「背負えるだろうが。早くしろ」
「背負うまでが大変なんだよな~」
愚痴るサスメイヤにペッテルも手を貸して背負わせる。傍から見ている限り、ペッテルは口が悪いけど協力的だ。
クマリを背負ったサスメイヤが歩き出す。部屋へ運ぶのはいいけれど、誰も手当について言わないので、思わず口を出してしまう。
「あのっ、治癒師は?」
「ああ、俺が呼んでこよう」
ヒミがサスメイヤとは別方向へ足を向けた。ということは、治癒師は拠点に常駐しているのだろうか。
「娘さんはこっちだ」
ペッテルがわたしを手招きで呼ぶ。ヒミとも違う方向へ向かうようで、ここからはバラバラで行動だ。
「クマリはちゃんと手当するさね。あんたはこっちだ。おいで」
どう考えてもこれ以上の心配は無用だった。諦めてペッテルについていく。奥にある平屋へ向かっていた。なにを話せばいいかわからず、ペッテルも何も言わない。しばらく二人の足音だけが響く中、ペッテルが独り言のように告げた。
「あんたは優しい子だ」
思いも寄らない褒め言葉にどぎまぎする。どうもペッテルはわたしには優しい。たぶん気遣ってくれているのだろう。
「えっ、いえ、そんなこと。ふ、普通です」
「そうか、普通か。そうさね。はっはっはっは」
何故か笑われて気恥ずかしくなる。
クマリとは出会ったばかりでどんな人かわからないけれど、ヒミとわたしを庇って必死に闘ってくれた。気にならないはずがない。